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ほんとのこととか作り事とかいろいろ書いています。
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「こいつ、自分の家に火をつけたことがあるんですよ」
TVのCM、バラエティ番組の内容をちらりと流している。
お笑いの相方に暴露された男は、苦笑いしている。


―何で火をつけたんだろう

と思ったとき、忘れていたことを思い出しました。
本当は忘れちゃいけないことなんだけど、安全に暮らしているとつい忘れてしまう。



幼稚園に上がるよりも前のことだと思います。
私が住んでいた家には、サザエさんちのように、台所の流しのそばに勝手口がありました。
その日は天気が悪かったのか風が強かったのか、それとも母が忙しかったのか、花火を勝手口でやりました。
それまでもたまにそういうことをやっていたと思います。
上がり口にしゃがみこんで、土間に向かって花火を散らすのです。
私が花火で遊ぶときは、火種はいつもろうそくでした。
たぶんそのときも、そばに火のついたろうそくを立てていただろうと思います。
水を張ったバケツもそばに置き、そして母が必ずそばにいたのに、その日だけはなぜか、はじめたとたんに母が他の部屋に行ってしまったのです。
私は(自分で言うのもなんですが)しっかり者と思われていたので、ちょっとなら目を離しても大丈夫と、母は思ったのでしょう。
私も、ほとんど毎日のように花火をさせてもらってすっかり慣れていたので、母がいなくても怖くありませんでした。
私はろうそくの火を花火に移し、火花を飛ばしながら思いました。

―この色とりどりにはじけているものも、ろうそくの火と同じものじゃないのかな

勝手口には古新聞が積んであり、私は消えてすぐの燃えがらを押し付けてみました。
炎は消えたままでした。
次の花火は線香花火で、じりじりと小さな音を立てるオレンジの球を、消える間際にぽとりと新聞の上に落としてみました。
新聞は丸くこげた跡がつきましたが、炎を出すことはありませんでした。

―もっと盛んに燃えている時に落とせば・・・

私は少しずつ落とすタイミングを早めました。

そして、とうとう、新聞に炎が見えました。

―やっぱり、花火でも紙に火がついた。

仮定が証明されて満足する暇もなく、新聞は勢いよく燃え始めました。
最初はマッチ棒の先くらいの炎だったのに、あまりに早い火の回りに私はびっくりして声も出ませんでした。
炎はめらめらと勝手口のドアをあぶり始めました。

―こわい!どうしよう!

そう思ったときに母が飛んできてバケツの水をかけて火を消しました。


ドアは黒くこげた跡がつき、それから花火は必ず外に出てやるようになりました。
一大事になったかもしれないということは、子どもの私にもよくわかりました。
だけどこのとき、私は怒られた記憶がありません。
きっと母が、子どもに火を持たせたままで目を離した自分の落ち度であると思ったのでしょう。
たぶん、子どもを叱るより、子どもも家も無事ですんでほっとしたという気持ちのほうが強かったのでしょう。



去年だったか、母にそのときのことを話したことがあります。
「今だから言えるけど、火がつくんじゃないかと思って自分で新聞に花火の火を落としたの。ごめんなさい」

母は言いました。
「ちゃうよ。あれは、ろうそくが倒れて火がついたんや」



私はまたまた謝り損ねて、心の中で母に頭を下げました。

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